鬼首高原で禿岳を眺めていたら 急に…

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>ばやん老人さん  どれがこの主題の尾根か見当がつきますか?



かつて、僕らオヤジ世代が若い時分に この鬼首高原に追い求めてきたものといえば?

 「冬の禿(はげかむろ)のリッジ」でした。


「冬の禿」に向かう この言葉の意味するもの

ヤマレコ ヤマップ FB ブログ…の若者たちは いっけん自慢気に? 写真の見映えよく 楽しそうに みんな笑って写っていたりしますが・・・昔はオチャラケを言う?チャライ?奴ってのは避けられたと云うか?いなかったですw ほんとか?(笑) 宴席では極端に豪快だけど じつはストイックな青年だったり、心優しい山男だったりで、、、でも反面 無口で、自己中で、没個的に山の文学本に耽る、とっつきにくい?、それらに窮屈感を覚えるほどでしたw 福島の会でも仙台の会でもみな一様に組織の力で腕前を磨くものばかりでした。山岳会だから当然といえば当然だけど(´艸`)

経験もなく、知識もなく、技術もないものは 先輩の行為を実践中に覚え込む。何故?どうして?などの理屈・裏付けは 後から自分で学んでついてくるもの としました。現在は 山や冬山の経験のないものが 突拍子もない事を自由に発言できるし ネットにワイワイ載せることもできます。知識が間違ったままでも 確かめもせずとも 公然とブログに書くことができますが…あれ?(笑)最近の話題では 人気バンド・RADWIMPSの「HINOMARU」のなかの「御国の御霊」という歌詞。日本人のアレル源、障る言葉が歌詞として並びます。「HINOMARU」は軍歌だ!とネットで批判されていますが 当の本人・作詞者の「時代性」を理解する心の欠如による歌詞選択という一般的な常識とのギャップ/乖離が物議を醸しました、賛否両論というから驚き、、、若者の無関心が生んだ現象の一つ、典型ですね。

その昔は、「恥はかきすて」…というようなことは山の世界にはありませんでした なんせ「恥」ですから 会の名誉も傷つけることになるので。山ヤの世界は狭かったのかもしれません。山岳会同士でも付き合いがあるので 狭い分だけ 大抵の人は(*'▽')見知りになります。誰がどんな考えを持ってるか? とか アイツらしい発言だ とか すぐに分かってしまいます。 経験年数や入った山域、所属山岳会の名前、沢か岩か雪山か尾根か?の志向を聞いただけで…技術レベルが判断された時代です。 見栄を張ったり嘘をついても実際に岩に向かえば?、スキーで数歩 歩いただけで技術レベルはすぐに分かりますから、、、経験のないものへは無視またはスルーで対処すれば終わっていました。経験ないから「しょうがない」てね。 昔は「恥」をわきまえていたんで 未経験者ましてや初心者は静かにしていたものです。周囲も相手にしてませんでしたし…。ネットのような増幅装置もなかったしね。

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で、、、経験がないからこそ山岳会の門戸を叩き、岩場からヤマメシ調理、人生訓に至るまで色々と学びました。手ほどきを受けたわけです。伝授・伝承・手ほどき、、、こういうインシュレーター機能(中間機能)があることは山岳会という組織のメリットです。いきなり小学生に大人の背広を着ろ とは言いませんのでレベルに合わせ段々と、でも徹底して覚えさせたものです。当時は周囲に余計なものがないので散漫にならずにただそれだけを「ヤル」ことで どんどん身につきました。

技術とノウハウ、対処とセオリーの紐付け、判断と伝承などの手段が組織にはあります。でもネットにはこの重要な機能は多分ないでしょう。動画などで積極的に補う努力はされているようですけど。ネットを見れば「答え」は即座にわかりますがどのような状態でその知識「答え」を使えばいいのか?その紐つけ…がよくわからない。だから、経験がないから「しょうがない」と済まそうとしても、周囲のネット民は済ませてくれません。逆に「無知」を増幅されて拡散・炎上するのがオチでしょう。

そうそうには滅多に来れない冬の禿… その登り方を僕らの世代は若い頃に必死で見て聞いて覚えたわけです。腕を磨き 知識を豊かに保持し 謙虚に 出しゃばらず 山岳界の先輩に教えを乞い… ピンチになっても最良の回避策を打ち立てて全員が安全に帰投できるまでに 地道に鍛えられたわけです。ぽっと出のリーダーなんて現実にはいません。経験に裏打ちされたリーダー会員を山岳会は冬の禿という「実践の場」で重ね 育て上げてきたわけです。

「実践の場」、その一つが冬山。ハウツーを越えた「総合力」を確かめられるところといえば「厳冬期の岩場」となります。(高校の山岳部程度ではやりません) 一歩踏み込むと足元からバスッと、鈍い音とともに亀裂が入って雪が切れ、畳数枚分の横幅でゴッソリと雪が弱層面を滑り出し、谷へ落ちていく、、、これは実際 焦りますよホントw 岩と雪のミックス、雪面のわずか数センチの踏み代に命運を託すわけです。その状況をこの眼とこの体で学んできました。斜面の雪がデリケートに引き合って静止する「細く長い稜線や尾根」をリッジといいますが 裏を返せば… 刺激があれば即ぐ崩れる という不安定個所でもあるわけで 慎重に雪の下層部を読みとります。そこが「判断」なのですが でも素人じゃ判断はできません。

人の後ろなら歩けるけど…先頭はムリ。「コピー登山」しかしていないし…って、コレです最近の問題はコレが遭難の一因になってきています。25年前、5月の涸沢カール・小豆沢でのこと。 穂高岳山荘に向け小豆沢を登っていたとき、、、自分の後ろに長い隊列ができていて凄く焦りました。誰かが登り始めるのを待っていたかのように各テントから飛び出してきては後ろに並ぶ、どんどん隊列が長くなる。その長さにビックリしました。出発か待機か?その判断力を身につけるために冬の穂高に来たんじゃないの? 涸沢のど真ん中にきてまで数珠つなぎだなんて、、、「右ならえ」の日本人気質はずっと昔からあったんですね。

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で、、、ハゲ禿を眺めていたら 急に…思い出す といえば、、、初登から数年後の2度目のテント泊の夜。呑みながらザイルパートナーの表情を読んでいた時。ヤツは緊張からか?次第に無口になり、しきりと酒をあおり始めるのでした。当然 酒が切れるとヤルことがありませんから 悲壮感を枕にして寝ることになります、消灯…。だが パートナーはたぶん夜明けまで?一睡もできなかったんじゃないでしょうか。

「ハゲ禿の初登攀」がそうさせているわけで恥でも何でもないのですが…。初登攀で味わう葛藤に対しては 我々の誰もが横から口出ししたりはしません。 心ゆくまで(?)その葛藤と向き合ってほしいからです。自分から 登るぞ!と意を決する、「克己」の瞬間を 黙って待っていてあげるのです。結果、逃げ出すことだってできるわけですけど、待ちます。仲間は厳しい だけど優しいのです でも厳しいけど(笑)

冬尾根で「一番のり」をやる…、、、新雪の斜面に最初のラッセル跡をつけて登るということは「岳人の誇り」でした、当時の価値観でしたけどね。誇りではあったけれど、しかし「バケツ」のない(他人の足跡がない、他人のコピーじゃない)斜面は恐怖でもあり過度の緊張を強いられるものです。だから尻込みして酒をたっぷり飲んで、恐怖から逃げられない夜を明かすわけです。組織としては そんな弱い心の持ち主を冬の禿の岩稜に差し向けるわけには行かないのです。

ハゲ禿のリッジに踏み込み、「冬の禿」に向かう…この意味するものは?と考える。 今もそうだと思いますが所属山岳会の「運営委員会からの指名」であり 「組織に実力を認められたチャンス」であり 「命を懸けたトライ」であるはず。人の秘めた能力を山岳会という「組織の力」で顕在化させ 育て上げているわけです。だから指名されるわけですが すべては安全登山のレベル維持のためです。各種ネットで展開されているような「ライトな山行報告」には決して書かれっこない「心の内側」の問題を山岳会は冷静に見極めていました。冬山というのは夏道歩きでは身につくことのない、一般に想像すらできない孤独な戦慄をもった山で、尖った会員たちだけの特殊な分野なのかもしれませんね。厳冬期の岩稜というのは理解するにも一般的には困難かも? そもそも価値観が違うし…とかいわれてしまいますし(笑) 仙台の山岳会の中でも「冬の禿」をヤルのは限定された山岳会だけでしたしね。

道半ばで山岳部を退部した方、方向性の違いから社会人山岳会を退会した方、中には逃げ出した方も?当ブログ読者にはおられることでしょう。 でも結局、その方々も、貴方も、私も、山が好きで今も山を続けているわけです。逆に言えば、、、不器用さもあってか?信念に基づいてか? 困難を乗り越えて「やりきった方」って 凄いですよね。山岳界の「レジェンド」とも呼ばれています。「船形山のブナを守る会」には朝日連峰の沢を跋渉してきた燻し銀な?レジェンドたちが「会の運営」にあたっています。みなさんも 興味があれば観察会に参加してみてください 面白い話が聞けるかもしれません。次回は 船形山避難小屋の薪の荷揚げ 9月30日だそうです。

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by tabilogue2 | 2018-06-06 15:35 | 鬼首高原 | Trackback | Comments(0)