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THE LONG TRAIL   国井 治 著

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皆さんは 「マジックマウンテン」という会社をご存知だろうか? 
冬山やってる大抵の人なら 「アルミ輪かんじき」の製造会社 と思い起こすのかな?

ここ数年、愛用している40リットルのアタックザックがある。アタックザックゆえにポケットがない
なので そのザックの外部に取り付ける「カンガルーポケット」(仮称)を買い求め愛用している

これって非常に便利で ワカン、アイゼン、スコップ、スノーバー、手袋など 雪で濡れていても
パッとしまえて、サッと出せる優れものだ 取り外しも自由だ。おまけに途中で拾ったゴミもしまえる
アチコチ探し回って、つい4年程前にカタログで見付けた これがマジックマウンテン製だった

同社取扱いのワカンも 目出帽も 毛糸の手袋も エーデルリッドの50mロープも愛用している
マジックマウンテンといえば カラビナのRoc’teryxブランドのメーカーでもあるし 
アイゼン・ピッケルで有名なグリベル製品の日本代理店でもある
 
こういえば、皆さんにはパッと分かるのだろうか? 企業のバリューというものが。。。

話かわって 最近のテントは・・・ポールを通す先端部が袋とじになったものが多いけど
このアイデアもマジックマウンテンの社長・国井さんが考案し、アライテントで試作されたもの

風雪の中、煽られまくってテントを設営するのは大変。このお陰でたくさんのソロイストが恩恵を受けたはず
当時の国井さんは このアイデアを「特許に登録する」術を知らなかったようで💦
そうこうしているうちに、今やほとんどのテントが片側袋とじになってしまった ほんと便利な機能だ

この会社の良さは「カンガルーポケット」(仮称)に表されるように 
山屋にとって「便利で、コレがあればもっといいなあ」と思うものを作ってくれるところにある
世界で作られた良いモノを 登攀実践の中で見つけ出し 日本市場に紹介するところでもある

そうなんです、この会社、社員は全てアルパインクライマーなんです
いまどき珍しい? 不器用な登攀家wばかりを社員に持ってる? 変わった?会社です(笑)
安定収入を得て岩や雪に打ち込める 専ら山と向き合える環境を国井さんは社員に与えているわけですね
逆に言えば 岩や雪壁で使ってみて試された製品しか扱わない、「信用できる会社」ということになります


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マジックマウンテンの社長でアルパインクライマーである国井 治さんが その半生記を数年前に著された・・・
ということで 「ゆうゆう館」の社長から手渡された本を読んでみたので、少し紹介してみたい
内容がありすぎて 遭難の実録があって 人生録という点で面白過ぎて チョピっと卑猥でw 一部だけ紹介しよう

アルパインクライマーです ヒマラヤサミッターでもあります といっても 僕の一世代の上の方ですが
山岳同志会の小西政継氏については「私にとって兄のように思える人」といってやまない
「小西を語る…想い」が綴られている

下積みが長かったと書いてあるが、「欧州帰りのエリート隊員たちより 下痢に強いヤツの方が動ける」
・・・言い得て妙であり、最高の自分への修辞でもありますね
加藤保男 長谷川恒夫 森田勝 重廣恒夫 湯浅道男 植村直己 ダンプさん 錚々たるメンバーにもまれてきた

エベレスト南壁 ヌプツェ北西稜線 ナンガパルバット雪崩遭難事故からの生還 

貧困な装備時代の経験から、アルパインクライマー:山野井泰史さんの用具供給スポンサーになっている
60年代、事務員の使う黒い袖カバーを油に漬け防水性能を高め、それをスパッツ代わりにしてきた
ナイロン製品のない時代からずうっと山を追いかけてきた その実話は”70年世代”にかなり身近なものばかりだ

四六時中、山の世界に居る・・・「岳人」とは こういう人たちを指すのだろう
彼の場合は ほぼ「最後の岳人」といえるのではないかな。時代の流れで 後ろに続く人は今や少ない




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これが マジックマウンテンのカンガルーポケット 超便利 優れものです


僕はこの本で 国井さんたちが若かりし頃に謳っていた「蔵王の山男」を目にしていた
その替え歌を学生時代 寮友であり、岳友である矢沢君から耳タコで聞かされていた
いいぞいいぞとおだてられ 学院ワンゲル来てみれば♪・・・が1番目の歌詞だったかな?

ザックに残った ローソクを 灯しゃ 雪洞白御殿♪
外はたそがれ猛吹雪 おいら せつなき山男 ああ 悲しきわがこころ 
ああ 悲しきわがこころ♪・・・このフレーズを繰り返すと ラストだった

これを山行のたび、稲荷小路での宴会のたび、聴かされ、スクラム組んで歌いもした、、、
このころ 山岳部の宴会といえば 猥歌と替え歌のオンパレードだった
でも今日、「蔵王の山男」を 歌ってしまった(笑) 懐かしかったぁぁぁ
「いつかある日」も思い出した。 その原曲になった、短調の「もしかある日」も口ずさめた

生と死 情景 野営の焚火 山の歌・・・個々の人生で影響を遺す、インパクトの強い山
日夜それに向かうこと 個人と山とが向き合うこと、、、これが「登山」
ピークハントは「登山」行為の結果に過ぎず、ピークに至るまでにこそ山に登る意義が秘められる







  


Commented by ばやん老人 at 2020-02-22 17:08 x
国井 治?聞いたことある名前と思ったら、やはり。
国井さんがメンバー(徒歩渓流会:トボケルカイ)とナンガパルバットへ遠征する壮行会へ出席したことがありました。1983年でしたか。
私の勤め先の外注さん(国井さんの同級生)は、国井さんが「マジックマウンテン」を起こす時に出資した一人で、その方から紹介されてゆきました。
会場には谷川の登攀で名を成した方など、そうそうたる方々がいて小さくなっていた記憶があります。
お礼のハガキが届きましたが・・・どこに行ったか。
そのうち「マジックマウンテン」でブログ一編まとめます。ヒントをありがとう。
Commented by tabilogue2 at 2020-02-22 20:55
> ばやん老人さん
おお、意外や意外 ばやん氏も一枚かんでいたんですねえwww 「むかしの人」 って一包みにしちゃあ 悪いか?(笑) もう彼は、、、6歳年長だから 76歳になられましたよ。トポケル会の中心メンバー。ナンガパルバットの遭難の記録が書かれてました。ロープが体に絡まって400mの滑落。その締め付けるロープで止まった と。九死に一生を得たわけで。。。バタンバタンと縦に後転しながら50度の斜面を落ちたそうで、止まった時に目の前が明るくて雪に埋まっていなかった記憶があると。。。でも 一人隊員を失った
Commented by ばやん老人 at 2020-02-22 23:11 x
遭難した方がおられたとは・・・。
当時、外注さん(今はサプライヤーさんと呼ぶらしい)から結果を聞いたかもしれませんね。
山の歌でも一編のブログが書けそうです。
Commented by tabilogue2 at 2020-02-23 10:44
当時登攀リーダーの志村一夫さん(32)。フィックスロープに到達した国井さんと、到達していなかった志村さんとで生死を分けたわけです。7000mでの雪崩は一瞬のうちに命を奪ったそうです。国井さんはロープに絡まれて脇腹に裂傷を負うも助かったとのこと。この事故の後「死」について深く考えたといってました。山とどう向き合うか、山への姿勢において国井さんは志村さんに強く影響を与えてきたわけです。山道具や衣類はほぼ国井さんのお古で、まさに兄弟みたいな間柄。このナンガでの壮絶な体験の様子が書かれてました。
Commented by tabilogue2 at 2020-02-23 10:52
山屋はロマンチストが多いから・・・ 山の歌って とてもしみじみします。
”積んで立ててくれよ このピッケル エタンソンの岩場に見るだろうと”
これって「いつかある日」の原曲、短調の「もしかある日」の一節ですが
エタンソンの岩場 ってどこにあるんでしょうか? 学生時代からずうっと今でも 謎は謎のままです。
Commented by tabilogue2 at 2020-02-23 12:27
トポケル会の大先輩に「風雪のビバーク」の松濤明さんがいたわけで、その彼の所属していた徒歩渓流会(トポケル会)に入会したって書いてありました。トポケル会はオールラウンドな登山スタイルで 沢も岩も縦走も何でもこなす連中だったと。ただ先鋭的なのが2、3人いて「岳人」誌に載る冬の初登記録がすこぶるの楽しみだったとか書いてありますね。
Commented by ばやん老人 at 2020-02-23 23:49 x
『私の山 谷川岳』杉本光作氏もその一人ですね。いや、会の発起人の一人といいます。
Commented by tabilogue2 at 2020-02-25 08:55
> ばやん老人さん
その本 持っていませんでした トポケル創立会員ですね 読んでみます。
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by tabilogue2 | 2020-02-21 10:51 | アラカルト | Trackback | Comments(8)